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令和8年 二級建築士 設計製図の試験 課題解説|商店街に建つ併用住宅(木造3階建て)

令和8年 二級建築士「設計製図の試験」の設計課題は、「商店街に建つ併用住宅(木造3階建て)」でした。近未来資格のエスキス解答例をもとに、主文の読み取りから外構・階振り、要求室等の考え方までを解説します。

主文

設計条件の冒頭は、次の一文から始まる。

「ある地方都市の駅に近い商店街において、収益を得られるコワーキングスペースを併設した住宅を計画する。」

わずか一文であるが、押さえるべき点は二つある。

一つは「駅に近い商店街」という立地である。コワーキングスペース部分用の駐車スペースは求められておらず、駐輪スペースが4台分求められている。①の「気軽に利用できるように配慮する」という指示も、この立地から出てくる。

もう一つは「収益を得られる」という一語で、ここで収益性が暗に求められている。事業として成り立たせる部分だということである。要求されていない前室や広すぎる廊下で収益部分の床面積を削れば、この一語からは遠ざかる。

① 開くコワーキングと閉じる住宅

主文では、コワーキングスペースは北側道路から、住宅部分は南側道路からアプローチすることが求められ、両者の動線を明確に分けることが指示されていたため、アプローチ計画について迷うことはなかっただろう。

また、コワーキングスペースについては「気軽に利用できるように配慮する」ことが求められており、商店街側に開かれた計画が求められた。具体的には、出入りしやすい位置に出入口を設けること、道路側から内部の様子が分かりやすい視認性の高い計画とすることなどがポイントとなる。

一方、住宅部分については、セキュリティやプライバシーの確保に配慮した計画が求められた。具体的には、隣地の商店からの侵入防止を兼ねたフェンスを設けることや、南側からの住宅アプローチについても、プライバシーやセキュリティを確保するための多少の工夫が必要となった。

本解答例では、北側は門・塀を設けずに開き、ポーチ(GL+150)からそのままフリースペースへ入る形とした。南側は門袖で玄関ポーチへの視線を絞り、東西の隣地境界にはフェンスを設けている。

② 将来の用途変更への配慮

子どもが独立した後に子ども室をコワーキングスペースとして活用することを考慮し、子ども室(A)又は(B)を吹抜けと隣接させることが求められた。

なお、吹抜けそのものは要求室等の表ではフリースペースの特記事項として指定されており、「2階までの吹抜け(4.8㎡以上)」とある。1,820×2,730とすれば4.97㎡で指定を満たす。吹抜けは1階のフリースペース内に設けるものだという点も、あわせて読み取っておきたい。

ここで注意したいのは、階段・エレベーターがいずれも「住宅部分専用」と指定されていた点である。転用にあたって上下階をどうつなぐのかは、課題文に示されていない。求められているのはあくまで吹抜けとの隣接であり、上下階を空間的につなぐことに主眼が置かれている。本試験の時点では、階段・エレベーターは課題文どおり住宅部分専用として計画すればよい。

ここに、この試験を通じて効く原則がある。書いてあることは忠実に守る。書いていないことは、必要以上に考えすぎない。将来を考えること自体は、留意事項②に「考慮し」と書かれている以上、課題文の要求である。考えすぎてはいけないのは、課題文が指定していない解き方のほうである。転用の段階でどの階段を共用するのか、改修で何を足すのか——それらは本試験の時点で決める必要がない。

あわせて2室を仕切る壁が「取外し可能な間仕切壁」と指定されており、将来は2室を一室として使えるようになっている。吹抜けを介して1階のフリースペースとつながる点も含め、上下階が一体のコワーキングとして機能する構成である。

本解答例では、1階フリースペースの上部に4,550×1,820=8.28㎡の吹抜けを設け、これに子ども室(A)を面させた。子ども室(A)(B)は東側に並べ、間の壁を取外し可能な間仕切壁としている。

敷地条件

敷地は126.00㎡(9,000×14,000)と小さく、南北両側にそれぞれ幅員6,000の道路が接する。近隣商業地域内の準防火地域で、建蔽率の限度は60%(所定の加算を含む)、容積率の限度は200%である。

面積の制約には注意が必要である。敷地面積126.00㎡に対して建蔽率の限度は60%であるから、建築面積の限度は75.60㎡となる。

外構に必要な面積を先に確保すれば、建築面積はおのずと限られてくる。総3階建てとすれば延べ面積は上限近くに収まるので、面積の調整に手間取ることは少なかっただろう。ただし、ピロティ・玄関ポーチ・バルコニー・駐車スペース・駐輪スペースは床面積に算入しないと明記されている。吹抜けも当然算入されない。ここを引かずに計算すると、実際より延べ面積を大きく見積もることになり、各室を切り詰めた窮屈なプランになってしまう。

本解答例では、建築物を7,280×6,370と4,550×3,640の組合せとし、建築面積62.93㎡、延べ面積180.51㎡に収めている。

構造・階数

木造3階建て・準耐火構造とし、最高の高さは16m以下、耐力壁は必要な量をバランスよく配置することが求められた。

高さについては、課題文が「最高の高さは16m以下」と定めている。これは単なる高さ制限というだけでなく、木造としての規模区分にも対応する数値である。令和7年4月の改正で、二級建築士が設計できる木造は「高さ16m以下かつ階数3以下」となった。課題文の指定は、その上限そのものである。

道路斜線については、これとは別に法令上の制限がかかる。ただし、要求図書として道路斜線の検討は求められていない。実際に抵触していた場合に、試験上どのように評価されるかは明らかではない。ただし、今年から法令集の持込みが可能となったことを考えれば、法令上の制限については、緩和条件も含めてこれまで以上に意識して計画する必要があるだろう。

本解答例では、北側・南側とも庇の先端までで後退距離を見ており、道路斜線の限度は北側12.94m、南側13.99m。これに対して建築物の最高の高さは10.5m程度としている。

東西が左右対称の敷地形状であるため、東西どちらにコアを寄せるかは自由に選べる。西日を避けることを考えれば、コアや水回りを西側にまとめ、居室を東側に配置するとよいだろう。階段・エレベーターを3層同じ位置に重ねておけば、耐力壁の位置もそろえやすくなる。

本解答例では、階段・エレベーターを西側に3層とも重ね、3階の水回りも西側にまとめて、居室を東側に寄せている。

コワーキングスペース部分の共通事項

要求室等の表では、コワーキングスペース部分の冒頭に室名欄のない行が置かれ、部門全体にかかる共通事項として三つの指定がなされていた。この「段抜き」の行は、主文の次に重要な、絶対に守らなければならない事項である。個々の室の特記事項が一室にしか及ばないのに対し、ここは部門全体を縛る。読み落とせば、その部門のすべての室が前提を外すことになる。

ア.専用の出入口を設ける

「専用」とは、住宅の玄関と兼用にしてはならないという意味である。北側道路にコワーキング、南側道路に住宅という主文の指示と対応しており、出入口が別々に存在していることが図から読み取れればよい。

風除室や受付、玄関ホールといった前室は要求されていない。扉を開ければそのままフリースペース、という構成が素直である。要求されていない前室をつくれば、そのぶん収益部分の床面積が削られる。

ただし、玄関ポーチのような緩衝部はあると便利であろう。屋外なので床面積に算入されず、出入口の位置も外から分かりやすくなる。床面積の調整が必要なら、その部分をピロティとして抜き、駐輪スペースと兼ねる手もある。

本解答例では、北側道路からポーチを経てフリースペースへ直接入る形とし、前室を設けていない。

イ.下足利用とし、床下地は土間コンクリート、仕上げは任意とする。また、必要に応じて段差処理を行う

靴のまま立ち入る前提で、床は土間である。仕上げは任意なので迷う必要はない。

ポイントは後段の段差処理である。本解答例のように、土間をGL+150程度、住宅部分の床をGL+450程度とすれば、両者の間には300程度の段差が生じる。「必要に応じて」とあるが、土間と床を同レベルにしない限り、実際には処理が必要になる。図面上は段を一段設けて「段差処理」と記入すれば足りる。

要求図書で土間の地盤面からの高さと玄関ホールの床高の記入が求められているのも、この段差を確認するためである。

本解答例では、コワーキングの土間と玄関の土間をいずれもGL+150、住宅部分の床をGL+450とし、両者の間にステップを一段設けている。

ウ.コワーキングスペース部分と住宅部分とは、屋内の1階部分で行き来できるようにする

コワーキングと住宅は分けたうえで、屋内でつなぐ必要がある。「屋内の」と書かれているので、いったん外に出て回り込む形では条件を満たさない。

ここで主文の「セキュリティやプライバシーの確保」とぶつかるように見えるが、つなぐ場所を1か所に絞って扉をつければよい。ふだんは施錠しておけば、住宅側に入られる心配はない。分けることとつなぐことは、扉1枚で両立する。

本解答例では、コワーキング側の土間と住宅部分の床との境にあたるステップの位置に、この連絡扉を設けている。

ここで一度立ち止まっておきたい。あくまで近未来資格の採点基準ではあるが、主文の下に置かれた留意事項①②と、今回の主役であるコワーキングスペース部分の段抜きア・イ・ウ、この五つを満たしていることが大前提である。要求室の広さや家具の記入はその後の話であり、この五つのどれかを外していれば、ほかがどれだけ整っていても大きな減点は避けられないであろう。

要求室等

まず、課題文における「スペース」「コーナー」と「室」の違いに注目したい。「フリースペース」「給湯コーナー」とある一方で、「ミーティングルーム」は室として要求されている。名称そのものが指定である。

もっとも、名称だけを根拠に要求違反と言い切れるものでもない。ただ、課題文が書き分けている以上、名称どおりに計画しておくのが素直である。

「スペース」と書かれているものを必要以上に室化せず、「室」として要求されているものは室として計画する。そのうえで、フリースペースを中心として、個別ブース、ミーティングルーム、給湯コーナーなどを機能的に配置し、コワーキングスペース部分全体を一体的かつ使い勝手のよい計画とすることが望ましい。

利用人数としては、フリースペース8人、個別ブース2人、ミーティングルーム6人で、合計16人が同時に利用できる規模となる。主文で見たとおり収益が求められている以上、この席数を確保したうえで、機能的にゆとりのある計画にすべきである。

住宅部分については、玄関・シューズクローゼット(ウォークインタイプ)・納戸(A)を1階に、子ども室2室と便所(B)を2階に、便所(C)を3階に配置することが指定されている。

LDK・夫婦寝室・ワークスペース・ランドリールーム・洗面脱衣室・浴室・納戸(B)の7室は「2階又は3階」とされ、どちらの階に置いてもよい。階が固定されている子ども室2室と便所(B)を2階に置いたうえで、残りをどう2層に割り振るかが、プランの方向性を決めることになる。

判断材料は、要求室等の表の中にはない。主文に立ち返って判断すればよい。すなわち、将来2階の子ども室がコワーキングスペースになったときを想定することである。転用後、2階は他人と同じ階になる。2階に何を置くかは、この一点を軸に決めればよい。

ただし、2階を子ども室2室と便所(B)だけにすると床面積に余裕が出すぎるため、「2階又は3階」の7室からいくつかを2階に回すことになる。ここからの分け方は一つではない。

一つは、LDKと水回り一式を3階にまとめるという分け方である。家族の生活の中心を最上階に上げ、2階には転用後に他人と並んでも不都合の出にくい室を残す。

とりわけ夫婦寝室は、主として夜間に使用する室である。コワーキングの営業時間は課題文に書かれていないが、寝室と使う時間帯が重なりにくいことは見当がつく。同じ階にあっても、時間帯がずれていれば実質的に衝突しない。空間で分けるだけでなく、時間で分けるという考え方も成り立つ。夫婦の在宅ワーク用のワークスペースも、用途としてコワーキングと近く、転用後に同じ階に並んでいても違和感がない。

もう一つは、LDKと子ども室を2階に、夫婦寝室と水回りを3階にまとめる分け方である。家族が集まる階と、夫婦のプライベートな階とで、階そのものを性格で分けたことになる。洗濯動線のように階をまたぐ動線は残るが、使う時間帯の違う動線を、無理に同じ階へ集める必要はない。

LDKと夫婦寝室を3階にまとめるという分け方もある。この場合は、水回りを除く住宅のプライベートな空間を最上階に集めた、という説明が立つ。

いずれも成り立つ。LDKや水回りを2階に計画したこと自体が、課題条件に反するものではない。大切なのは、動線の交錯が起こりにくいよう配慮されているかどうかである。

課題文に指定のないところは、常識で考えて決めてよい。ただし、決めたことを絶対の条件だと思い込まないことである。

要は、ご自身の設計次第ということである。どちらの階に置くかを何らかの根拠をもって判断し、それが図面に表れていればよい。

本解答例では、LDK・浴室・洗面脱衣室・ランドリールームを3階にまとめ、2階には夫婦寝室とワークスペースを置いた。

屋外施設等

駐車スペース1台分、駐輪スペースはコワーキング用4台分と住宅用4台分の計8台分が求められた。126㎡の敷地にこれだけを収めつつ、無理のないアプローチ計画が必要であった。

門・塀・植栽等については「各出入口の位置を考慮して計画する」とあるだけで、三つすべてを設ける必要はない。ただし、北側に門扉を設ければ「気軽に利用できるように配慮する」という主文と整合しにくくなる。北と南で扱いを変えるという考え方は、ひとつの解き方といえる。

本解答例では、コワーキング用の駐輪4台分を北東の空地に、住宅用の4台分を南西の空地に納め、駐車スペースは南東に2,500×5,000で取っている。門・塀・植栽等は、北側を植栽のみとし、南側に門袖を設けた。

計画の要点等

計画の要点等では、次の三点について具体的に記述することが求められた。

  • ①コワーキングスペース部分を気軽に利用できるように配慮しつつ、住宅部分のセキュリティやプライバシーの確保のために、工夫した点
  • ②子ども室の将来対応において、子ども室と吹抜けの配置について、工夫した点
  • ③準耐火構造について、配慮した点

①と②は、いずれも主文の留意事項①②をそのまま問い直したものである。つまり、計画の要点等は図面とは別の設問ではなく、図面で行った判断を言葉で説明させるものということになる。図面上で条件に答えていれば、その根拠を書けばよい。逆にいえば、図面と要点の記述が食い違っていれば、どちらかが破綻していることになる。

①については、南北の対比を書くのが素直である。北側は門・塀を設けず植栽のみとして開き、南側は門袖などで視線を絞る。あわせて、コワーキングと住宅の連絡部を一箇所に絞り、通常時は施錠して管理する、という点にも触れておきたい。

②については、吹抜けの効用を書きたい。吹抜けと隣接させること自体は課題文の指定であり、指定を守ったというだけでは「工夫した点」にならない。書くべきは、その結果として何が得られるかである。子ども室を吹抜けに大きく面させることで、転用後は1階のフリースペースと上下につながった開放的な空間となり、豊かな執務環境が得られる——といった内容になる。

あわせて、階の振り分けまで触れられればなおよい。LDKや水回りを3階にまとめ、2階には転用後も支障の少ない室を置いた、という判断は指定事項ではないので、そのまま工夫として書ける。

③の準耐火構造については、主要構造部をどのように準耐火構造とするかについて、記入欄の大きさを考慮しながら簡潔に記述する。

要求図書

注目すべきは、延焼のおそれのある部分の記入が「1階平面図兼配置図」にしか求められていない点である。一方で、防火設備の「(防)」の明記は全ての階に求められている。

この書き分けには理由がある。今回の敷地では、隣地境界から5mずつをとると線が交差して敷地全体を覆ってしまうため、2階・3階は全面が延焼のおそれのある部分となる。線を引いても情報にならないのである。これに対し1階は3mずつであるから、中央の帯だけが対象から外れる。つまり、線を引く意味があるのは1階だけということになる。

本解答例では、1階平面図兼配置図に3,000ずつの延焼ラインを引いたうえで「(延焼のおそれのある部分にある外壁の開口部は防火設備とする)」と注記し、2階・3階には線を引かず「(全面が延焼のおそれのある部分となるため外壁の開口部は全て防火設備とする)」と記している。なお、本試験の答案では各階の開口部に「(防)」と明記する必要があるが、本解答例はエスキスであるため、この注記の文章をもって代えている。

図面としては、2階床伏図兼1階小屋伏図も求められている。ピロティや吹抜けを設けた場合は、その部分の梁の架け方がそのまま問われることになるので、平面の形が決まった時点で伏図まで頭に置いておきたい。

そのほか、玄関及びコワーキングスペース部分の土間部分の地盤面からの高さ、玄関ホール(廊下)の床高の記入が求められており、これは前述の段差処理と対応している。また、1階の屋根伏図は2階平面図に記入することになるため、1階の庇を描いた場合はその表現も必要になる。立面図は北側、すなわち商店街側の指定であり、部分詳細図の切断位置も1階のフリースペースの外壁を含む部分と、いずれもコワーキング側が指定されている点は、この課題の性格をよく表している。

総括

この課題が問うていたのは、次の三点に集約される。

  • 1. 商店街に対して開くコワーキングと、閉じる住宅とを、一棟の中で同時に成立させること
  • 2. 限られた敷地で、収益の源であるコワーキングスペースの床面積をしっかりと確保すること
  • 3. 将来の用途変更に耐える可変性を備えること。とりわけ2階の計画がこれにあたる

いずれも主文と留意事項①②に明記されており、条件文の冒頭を丁寧に読み込めば、計画の方針はおのずと定まるという構成になっていた。逆にいえば、そこを読み飛ばし、要求室等の表を埋めることに終始した答案は、室がそろっていても厳しい評価となる可能性が高い。

難易度についても触れておきたい。例年と比べるとやや高いと、近未来資格では位置づけている。

まず、条件文の分量が多く、要求事項も細かい。読み取りとエスキスに、それなりの時間を取られる課題である。

書かれていること自体に奇をてらったところはない。主文と留意事項を素直に追えば、方針は立つ。難しさは、外構の捌き方と、「2階又は3階」とされた7室の振り分け——いずれも自分で決めなければならない部分に集まっていた。条件を読む難しさではなく、決める難しさの課題であった。

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(文責:近未来資格)