真相 令和8年「ホテル」

解答例

近未来資格による解答例です(試験実施機関の標準解答例ではありません)。「拡大して読む」を押すと拡大し、ドラッグ・スクロールで動かせます。

図面(2階平面図・3階平面図・1階平面図兼配置図・断面図・面積表)
解答例 図面
記述(計画の要点等)
解答例 記述

近未来資格 令和8年 一級建築士試験 設計製図「ホテル」

本試験 解答例の解説

真相

課題文の読み解き / 計画・設備・法規・構造

序章読み解き

主文/敷地及び周辺条件/建築物/その他の施設等/留意事項/要求室等/要求図書・面積表・計画の要点等

はじめに

本書『真相』は、近未来資格が作成した令和8年一級建築士設計製図試験「ホテル」の図面・記述の解答例に付属する解説書である。直前予想に付けた『論点』が試験前の冊子なら、本書は試験後に「本試験は何を問うていたのか」「解答例はなぜこうなるのか」を明かす冊子である。

序章では、課題文を頭から順に読み解いていく。設計の工夫を先に語るのではなく、「課題文にこう書いてあるから、解答例はこう計画した」という順番で説明する。実は、この「こう書いてあるから、こうした」こそが設計製図試験をクリアする重要なポイントであり、毎年変わらない、厳守すべきルールである。あわせて、課題文の中で特に重要な項目と、外したときに採点上どう響くかを、その都度示していく。

詳しい考え方(法規の根拠、設備の方式、過去問との比較など)は、第1章以降で計画・設備・法規・構造に分けて論じる。序章は、まず課題文を通して読むための章である。

なお、図面解答例・記述解答例を含め、本書の内容はすべて、試験実施機関の見解ではなく、近未来資格が独自の視点でまとめたものである。標準解答例や試験元の採点基準を示すものではないことに留意してほしい。採点に関する記述も、試験元が公表している事項を除き、近未来資格の採点基準に基づく見解である。

また、解答例が唯一の正解というわけではない。自分の答案のほうが適切な場合もあるし、実際の採点では解答例のほうが減点されることもあり得る。本書の内容を正しいと思い込んだり、解答例と違うからといって落胆したりする必要は全くない。

この資料の使い方

手元に自分の復元図のコピーとマーカーを用意し、解答例のゾーニング図(第1章の図1-2〜1-4)のように部門別に色分けをしてから読み進めてほしい。また、自分の復元図と解答例を見ながら本文と照らし合わせ、理解を深めてほしい。

主文

主文は、「高原のリゾート地域にあり、緑豊かで景観に優れた公園に隣接した敷地に、チャペルを併設したホテルを計画する。」である。この一文から読み取るべきことは三つある。

①リゾート地域にある

②緑豊かで景観に優れた公園に隣接している

③チャペルを併設している

一つ目は、このホテルが都市のビジネスホテルではなく、リゾート地のホテルだということである。宿泊客は、滞在そのものを楽しみに来る。ただし、リゾートホテルというより、リゾート地に建つシティホテルに近い内容であったと感じた人も多いはずだ。筆者はこの冒頭の文章を読んですぐに、「X方向のスパン(間口)は広めがいいかな」と推測した。このように勘を働かせることも、この試験では大切である。要は、解答例がどうなっているかを想像しながら計画すれば、おのずとエスキスは簡単になる。

二つ目は、敷地の北に接する公園である。この課題の「景観」は北側にある。特に公園側には、メインとなる室を計画したい。例えば、披露宴会場を兼ねるレストランや客室が挙げられるだろう。解答例は、2階のレストランと3階の客室を公園側に面させ、北側にもバルコニーを設けた。

ただし、平成29年の「小規模なリゾートホテル」のように、「全ての客室は、名峰や湖の眺望に配慮する。」といった条件は、今回は要求されていない。全室を公園側に向けるようなこだわりは要らない。あくまで「景観に優れた公園が北にある」という考えで十分である。全室を北向きにしても計画できないことはないが、自らプランを難しくする必要はない。

三つ目は、チャペルを併設していることである。その中身は、続く「計画に当たっては、…」の段落に書かれている。既存の2階建てチャペル(既存部)を残し、新しいホテル(増築部)と接続して一の建築物とする。

そのうえで、「求められていること」として⑴〜⑶が示されている。

⑴ホテル利用者(宿泊客、チャペル利用者、レストラン利用者)、従業員等の円滑な動線計画及びセキュリティの確保

⑵増築部と既存部との接続部の安全性(エキスパンションジョイント、バリアフリー等)の確保

⑶敷地内外の環境への配慮

⑴は、利用者を「宿泊客」「チャペル利用者」「レストラン利用者」の三つに分けて書いている点が大切だ。宿泊客だけのホテルではない。挙式に来る人、食事に来る人が、宿泊客と同じ建物を使う。これが計画の骨格になる。動線計画とセキュリティの答えとして、解答例は1階を共用・式場・管理、2階をレストランと宿泊(客室C)、3階を宿泊とし、宿泊客が使う客室階と、外来者が使う部分とで、動線を上下に分けた。なぜこのような分け方になるのかは、第1章「計画」で解説する。

⑵は、接続部について「エキスパンションジョイント」と「バリアフリー」を名指ししている。既存部の1階床高はGL+200、2階床高はGL+4,500である。増築部の床高をこれにそろえないと、接続部に段差が生じる。解答例は増築部の1階床高をGL+200、2階床高をGL+4,500とし、接続部を段差なしでつないだ。床高をそろえない場合は屋内スロープなどが必要になるが、床高をそろえるのが素直な解答といえよう。⑵は計画の要点等⑶(クリアランスとその設定根拠)にも直結している。

⑶は「敷地内外の環境」である。北の公園、東の写真館とローズガーデン、既存部の前庭と、敷地の周りには配慮すべきものが多い。⑶は計画の要点等⑸(外構計画)へつながる。

このように⑴〜⑶で求められていることは、動線計画、セキュリティ、安全性(バリアフリー)、敷地内外の環境への配慮と非常に多い。しかし、これらは「これを守ってください」と明確に書かれた条件だと考えれば、計画の大きな手がかりになる。

この試験の「主文」は、課題の答えそのものである。これは毎年変わらない、エスキスをする上での大きなヒントであり、ルールでもある。主文の「求められていること」⑴〜⑶が、そのまま計画の要点等の問いになっていることに気づけば、図面と記述を同じ考えで組み立てられる。このことは、問題用紙が配られてすぐの「素読み」の段階で頭に入れておくとよい。

1. 敷地及び周辺条件

敷地は48m×35m、1,680㎡である。西に幅員6mの道路、南に歩道付きの幅員12mの道路があり、北は公園、東は写真館の敷地に接する。既存部(チャペル)は敷地の東端にあり、前庭を南に向けている。

⑵の「歩道の切り開きは、2か所(1か所当たり6m)まで可能」は、車寄せの形を決める手がかりである。2か所あれば、入口と出口を分けた一方通行にできる。解答例は南の歩道を2か所(各6,000)切り開き、西を入口、東を出口とする一方通行の車路とした。

⑶は、近隣商業地域・準防火地域、建蔽率の限度80%、容積率の限度200%である。なお、試験当日の訂正表で隣地斜線の勾配が2.5に変わったが、3階建てで31mを超える建物は考えにくく、大きな問題にはならない。

数字で押さえると、次のとおりである。

項目限度解答例
建築面積(既存部を含む)1,680×0.8=1,344㎡1,130.25㎡
延べ面積(既存部を含む)1,680×2.0=3,360㎡2,852.25㎡

建蔽率にも容積率にも余裕がある。この課題は、面積を詰め込む課題ではなく、既存部を含めた動線とゾーニングの課題であることが、ここからも分かる。

敷地図でもう一つ見落とせないのが、北の公園に付いた「(建築基準法第2条第六号イに該当しない。)」である。この公園は、延焼のおそれのある部分から除ける「防火上有効な公園」ではない。つまり、北側の隣地境界線からも延焼ラインが生じる。緑豊かな公園だからと延焼ラインを省くと、法規の誤りになる。令和8年から設計製図の試験にも法令集の持ち込みが可能になったので、課題文にある条文(法第2条第六号イ)を試験中に調べることができた。その前に、“いつもの課題”と違うところには十分な検証が必要だ、という教訓がここにもある。

2. 建築物

⑴は、「増築部及び既存部は、1階及び2階の屋内で接続させて直接行き来できるように計画する。」である。1階と2階の両方で、屋内でつなぐ。どちらか一方だけ、あるいは屋外の渡り廊下でつなぐ答案は、条件違反である。

接続できる位置は、下書用紙の「既存部平面図、屋根伏図、断面図」に点線で示されている。既存部の西側(増築部に面する側)である。解答例は、この西面に増築部を幅2mの接続部で寄せ、1階はロビー側と控室側、2階はEVホール側でウエディングサロンにつないだ。接続部にはエキスパンションジョイント(Exp.J)を設け、出入口の両側に袖壁を付けて扉との取り合いを整えている。

増築部と既存部の条件表は、一行ずつ意味がある。

項目課題文読み取れること
増築部の構造・階数構造種別は自由、地上3階建ての耐火建築物3階建てで決まり。階構成を迷う余地は少ない
増築部の規模既存部と合わせて建蔽率・容積率の限度以内面積表は既存部を含めて算定する
既存部の構造耐震スリットを用いた純ラーメン構造のRC造、地上2階、耐火建築物既存部も耐火建築物。純ラーメン構造なので地震時の変形を見込み、Exp.Jのクリアランス(要点等⑶)を決める
既存部の規模建築面積166.25㎡、床面積218.25㎡(1階157.50㎡、2階60.75㎡)面積表にそのまま加える
既存部の床高1階GL+200mm、2階GL+4,500mm増築部の床高をこれにそろえる
その他空調設備・電気設備は改修不要。柱と梁は撤去してはならない既存部の設備はそのまま使える。接続は決められた位置で、柱と梁を残して行う

特に注意したいのは、「その他」の行の「柱と梁は、撤去してはならない」である。接続できる位置は下書用紙に点線で示された部分に決まっており、その範囲で柱と梁を残して開口を設ける。解答例でも、接続部の開口は既存部の柱と柱の間に収め、柱を優先して作図している。

⑵はバリアフリーである。増築部及び既存部は「建築物移動等円滑化基準」に適合させ、主たる階段は「建築物移動等円滑化誘導基準」に適合させる。誘導基準の階段は、蹴上げが16cm以下、踏面が30cm以上である。解答例は利用者が使う東側の階段を主たる階段とし、踏面を300mm、蹴上げを約143mm(1〜2階4,300÷30段)とした。この一文を読み飛ばして普通の階段の寸法で描くと、階段が短くなりすぎる。主たる階段は、最初から長さを見込んで平面を組むこと。

3. その他の施設等

⑴①は、「車椅子使用者用として1台分、サービス用として1台分のスペースを設ける。」である。大きさの指定はない。解答例は、車椅子使用者用を車寄せの西(主出入口に近い南側)に、サービス用を西側道路に面した北寄り(受水槽室・機械室の近く)に置いた。車椅子使用者用は利用者側、サービス用は管理側という、当たり前の振り分けである。

⑴②は、利用者・従業員の駐車場は敷地の外(東側の写真館が所有するローズガーデンの隣のホテル専用駐車場)を使う、という条件である。そして「歩行者はホテル専用駐車場からローズガーデン内の通路を通って自由にホテルの敷地にアクセスすることが可能」と続く。ここがこの課題の読みどころの一つである。利用者は南の道路からだけでなく、東のローズガーデン側からも歩いて来る。前庭は記念撮影や屋外イベントに使われるが、それを理由に通行できないと判断するのは早計だ。ローズガーデンは写真館の南側(敷地図の下側)にあるので、ホテル専用駐車場→ローズガーデン→前庭と歩くルートが無理なく読み取れる。また、主出入口は、幅員が広く敷地の長辺方向にあたる南側に設けたい。主出入口が南側になれば、ローズガーデンからの歩行ルートもそこへつながっていく。解答例は、既存部の前庭からローズガーデンへ抜ける通路を設け、前庭を経て主出入口とチャペル出入口の両方へ向かえるようにした。

⑵は車寄せである。「雨天時の乗降に配慮し、車寄せには、屋根、庇等を設ける。」とあるので、乗降する位置の上に屋根が要る。解答例は、主出入口の前をピロティ(ポーチ)とし、その上の2階バルコニーが車寄せの屋根を兼ねる形にした。車寄せは入口と出口の一方通行である。屋根がない車寄せは、条件を外したものとして扱われるだろう。

⑶は、「既存部の前庭での記念撮影や屋外イベントなどの利用に配慮し、外構(植栽、通路等)の計画を行う。」である。前庭は、挙式後に新郎新婦と参列者が出てくる場所であり、ただの通り道ではない。解答例は前庭を広く空け、植栽で南の道路からの視線をゆるく遮り、ローズガーデンとのつながりを持たせた。前庭を植栽で埋め尽くしたような計画は、読み取れていないと判断されるだろう。⑶は計画の要点等⑸(外構計画)と、要求図書の「既存部の前庭等の外構計画」の両方につながっている。

4. 留意事項

⑴の「既存部と増築部とは接続し、一の建築物とする。」は、主文の繰り返しである。主文と留意事項の両方に書かれた条件は、それだけ重い。

⑵は架構、⑶は設備機器等の搬出入、更新、メンテナンス性及び景観である。解答例は、増築部を8m×7mのグリッドによる整形な架構とし、1階の機械室には西の外壁から直接出入りできる搬出入口を設けた。キュービクル・空調室外機・ヒートポンプ給湯機は屋上の設備スペースにまとめ、既存部の屋根には設備を載せない。既存部の外観を崩さないことも「景観」への配慮である。

⑷は延焼ラインである。最後の一文「ただし、増築部と既存部の隣棟間には、延焼ラインが発生しないものとする。」を見落とさないこと。増築部と既存部の間に延焼ラインを引く必要はない。一方で、敷地の周りからは通常どおり延焼ラインが生じる。解答例では次のようになる。

方角起点延焼ライン
西(道路6m)道路中心線1階は道路境界線上、2階以上は境界線から2m内側
南(道路12m)道路中心線道路内に収まるので敷地には生じない
北(公園)隣地境界線1階3m、2階以上5m(防火上有効な公園ではない)
東(写真館)隣地境界線1階3m、2階以上5m

延焼ラインにかかる外壁の開口部には防火設備を設け、要求図書のとおり「防」の表示を記入する。延焼ラインは「建築物の延焼のおそれのある部分の有無にかかわらず必ず記入する」ものである。

⑸は、「地上に通じる2以上の直通階段」と「敷地内の避難上必要な通路」である。解答例は、西の管理側と東の利用者側に直通階段を一つずつ置いた。歩行距離は2階で25.3m(重複距離19.5m)、3階で23.7m(重複距離9.6m)である。ここで注意したいのは、2階のウエディングサロンからの重複距離である。階段を中央付近に計画した場合は、限度を超えていないか確かめたい。敷地内通路は、チャペル出入口を含む屋外への出口から道路まで、有効幅1.5m以上を確保した。

要求室等

要求室等は「(下表の室等は、全て計画する。)」で始まる。一室でも欠ければ、要求室の欠落として重く扱われる。部門ごとに見ていく。

宿泊部門

客室Aは計12室以上、1室当たり25㎡以上で、そのうち2室をコネクティングルーム(隣り合う2つの客室を扉で直接つなぐ)とする。客室Bは車椅子使用者用の洋室で計2室以上、客室Cはベッドルームとは別にリビングルームを持つスイートルームで計2室以上である。A・B・Cのどの客室にも「浴室、洗面所、トイレ」と「バルコニー・ベランダ」が要求されている。バルコニーが全客室に要るので、客室は外壁に面し、その外にバルコニーを回すことになる。もちろんインナーバルコニーとしてもよい。

解答例は、3階を客室階として中廊下の南北に客室を並べ、客室Aを14室(各32㎡、A1とA2がコネクティングルーム)、客室Bを2室(B1・B2)とした。客室Cは2階の南に2室(C1・C2、各56㎡)を置いた。南北の外壁には、出1.5mのバルコニーを通している。

リネン室は「客室のある全ての階に設ける」である。客室Cを2階に置けば、2階にもリネン室が要る。解答例は2階と3階の両方にリネン室を設けた。2階のリネン室を大きめにしたのは、挙式関連のリネンも考慮したためである。3階には、その他の室として宿泊者用ラウンジ、ランドリー、自販機コーナーを置いている。

式場部門

チャペルは既存部の1階、ウエディングサロンは既存部の2階と、位置が決まっている。計画するのは控室である。新郎控室、新婦控室、牧師等控室と、親族控室(10人程度利用)を2室設ける。そして特記の最後に「チャペルとの動線に配慮する。」とある。

解答例は、控室を増築部の1階北側に並べ、既存部に接する東端に新婦・新郎・牧師等の控室を置いた。控室の前からチャペルの西側に沿って「新郎新婦用通路」を設け、ロビーを通らずにチャペルへ入れるようにした。親族は、親族控室から廊下を通って直接チャペルへ入れる。新郎新婦の通り道と参列者の通り道を分けたことが、この一文への答えである。2階には着付室と写真・衣装室を設け、ウエディングサロンと同じ階で支度できるようにした。

ただし、この課題はあくまでホテルであり、結婚式場ではない。受験生が挙式について事前に学習しておくのは難しく、挙式に必要な室や動線がどこまで問われるかも読み切れない。そのため、この部分の問われ方はそれほど厳密ではないと考える。たとえば、ロビーを介して風除室や接続部からチャペルに入る形でも問題はなく、実際にそのようなホテルもあるだろう。

一方で、今回の課題は要求室等ではっきりと部門分けがされている。ゾーニングや基本的な動線は、重要な採点ポイントになる。

管理・共用部門

フロントは、宿泊客のチェックイン・チェックアウトや案内を受け持つ、ホテルの顔である。同時に、ロビーを出入りする人を見渡す管理の拠点でもある。解答例はフロントをロビーに置き、南と東を開放したカウンターとして、主出入口とチャペル側の両方に加えて、利用者用と宿泊客用のEV付近を見渡せるようにした。クロークは「宿泊客のほか、チャペル利用者、レストラン利用者の荷物等を預かる」。三種類の利用者が必ず通るロビーに置き、フロントと並べた。事務室は「執務スペース(従業員8人分)」を設ける。

レストランは200㎡以上で、「宿泊客、一般客が利用するほか、披露宴会場(バンケットルーム)としても使用する」。一般客が使うので、宿泊部門を通らずに行けることが望ましい。また、チャペルが1階にあり、ウエディングサロンは挙式中にスタッフの控室等に使うことから、式場部門は1・2階にまとめるのが自然である。ただし、ゾーニング・動線が切れていなければ、レストランを1階や3階に置いても、十分に成立するプランはできる。解答例はレストランを2階の北側に置き、待合スペースと受付を前に設けた。挙式後は、チャペルから2階へ上がれば披露宴にそのまま移れる。

「その他」の行には、倉庫、ゴミ置場、従業員用の更衣室、休憩室、トイレが名指しされている。「その他」だからと省かないこと。解答例は更衣室2室・守衛室・倉庫・ゴミ置場を1階の西寄り(管理側)に、従業員休憩室を2階に置いた。

設備

受水槽室は50㎡以上で受水槽と給水ポンプを置き、消火ポンプ室は屋内消火栓用とする。電気設備(キュービクル)は屋上。空調室外機、エレベーター、PS、DS、EPS等は適切に設け、「採用した設備計画に応じて、「機械室」等を適切に設ける」。最後の一文は、設備の方式を自分で決め、それに合う室を設けよという意味である。

解答例は、受水槽室(56㎡、2槽式・6面点検)、消火ポンプ室、機械室(給湯設備)を1階の西側にまとめた。空調は個別方式とし、室外機は屋上。給湯の熱源は屋上のヒートポンプ給湯機とし、1階の機械室には貯湯槽2基と給湯ポンプを置いた。なぜこの方式を選んだかは、第2章「設備」で論じる。

要求図書

要求図書は、どの図面に何を記入するかを指定している。書く場所を間違えると、記入していても「記入漏れ」と同じ扱いになりかねない。たとえば最小後退距離は、上階のバルコニーから測る場合でも、1階平面図・配置図に記入する。バルコニーは建築物の一部である。

要点は次のとおりである。

面積表と計画の要点等

面積表は、建築面積も各階の床面積も「既存部を含む。」である。増築部だけの面積を書くと誤りになる。床面積に算入しないものとして、ピロティ、塔屋、バルコニー・ベランダ(外気に有効に開放されているものに限る。)、屋外階段、屋上設備スペースが挙げられている。ただし、ピロティ等を駐車場や設備スペースなど屋内的な用途に使う場合は算入する。

解答例の面積表は次のとおりである。式の最後に既存部をそのまま加えている。

区分算定式面積
建築面積32×28+32×(1.5-1)×2+2×18+166.251,130.25㎡
3階32×28896.00㎡
2階32×28+2×3+60.75962.75㎡
1階32×25+2×18+157.50993.50㎡
床面積の合計―2,852.25㎡

建築面積の「32×(1.5-1)×2」は、出1.5mのバルコニー(南北)の先端から1mを除いた部分である。「2×18」は接続部(幅2m)、1階の「32×25」はピロティを除いた増築部、2階の「2×3」は2階部分の接続部である。塔屋は床面積に含めていない。

計画の要点等は⑴〜⑸の五問である。

⑴客室Bについて、①バリアフリー計画、②水回りの段差の処理を踏まえた構造計画、③客室内の快適性に配慮した空調換気設備計画(客室内平面図・断面図 1/50)

⑵ホテル利用者と従業員の動線計画及びセキュリティ・ゾーニング計画

⑶エキスパンションジョイントのクリアランスと、その設定根拠

⑷ホテルの機能や特性を踏まえた、省エネルギー及び二酸化炭素排出量削減への配慮(太陽光パネル、LED照明、Low-Eガラスは除く)

⑸外構計画について配慮した点

⑵は主文の⑴、⑶は主文の⑵、⑸は主文の⑶と、そのまま対応している。図面で計画したことと、記述で書くことが食い違わないことが大切である。例えば⑴③の空調は、図面で屋上に室外機を置いたことと、断面図の天井の中の作りがそろっていなければならない。⑷は、太陽光パネル・LED・Low-Eガラスという「定番の答え」を封じている。ホテルならではの配慮を自分の計画から引き出せるかが問われている。各問の考え方は、第1章以降で論じる。

序章のまとめ

課題文を順に読むと、この課題の大前提は、主文の「求められていること」⑴〜⑶に集約される。これに、法規で見落としやすい⑷・⑸を加えておく。

⑴ 利用者と従業員の動線計画とセキュリティ

⑵ 接続部の安全性

⑶ 敷地内外の環境への配慮

⑷ 北側の公園からの延焼ライン

⑸ 2階ウエディングサロンからの重複距離・歩行距離

この五つのどれかを外すと、ほかが整っていても大きな減点は避けられないだろう(近未来資格の採点基準による)。

この課題は、建蔽率も容積率も余裕があり、階数も3階と決まっている。大きさを収める難しさよりも、既存部とのつなぎ方と、立場の違う利用者の動線をどう整理するかが問われている。また、既存部を含めた敷地内外での平面動線と、建物内でのゾーニングを意識した縦動線の処理がポイントとなる。

書いてあることは忠実に守る。書いていないことは、必要以上に考えすぎない。

第1章からは、ここで読み解いた条件をもとに、解答例がなぜこの形になったのかを、計画から順に論じていく。

第1章計画

課題文から計画の骨格へ/階構成/1階のゾーニング/既存部との接続/動線とセキュリティ/各階のプランニング/外構計画

1-1 課題文から計画の骨格へ

序章では課題文を頭から読み、「こう書いてあるから、こうした」を一つずつ確かめた。この章では、それらの読み取りを束ねて解答例の骨格がどう決まったかを論じる。計画の骨格を決めた読み取りは、次のとおりである。

課題文の記述読み取れること解答例での扱い
主文「緑豊かで景観に優れた公園に隣接」景観は北側にある。メインとなる室を公園側に向けたい2階のレストラン、3階の客室A1〜A8を公園側(北)に向けた
主文⑴「ホテル利用者(宿泊客、チャペル利用者、レストラン利用者)、従業員等」ホテル利用者の三者に従業員を加えた四者を分けて、それぞれの動線と居場所を決める課題である階構成と1階のゾーニングで四者を分けた(1-2〜1-5)
主文⑵「接続部の安全性(エキスパンションジョイント、バリアフリー等)」接続部は構造の縁を切り、床高をそろえて段差をなくす増築部の床高を既存部(1階GL+200、2階GL+4,500)にそろえ、Exp.Jを設けた
2.⑴「1階及び2階の屋内で接続」「接続可能な位置は下書用紙」接続は両方の階で、点線の範囲で行う。2階の点線はウエディングサロンの西面だけ1階は2か所、2階はサロンの1か所で接続(1-4)
1.⑵「歩道の切り開きは、2か所(1か所当たり6m)まで」入口と出口を分けた一方通行の車寄せを想定している南の道路に入口(西)と出口(東)。ピロティの前で乗降
3.⑴②「ローズガーデン内の通路を通って自由にホテルの敷地にアクセス」歩行者は南の道路だけでなく、東のローズガーデンからも来る東側に「ローズガーデンからのアプローチ」を設け、前庭につないだ
要求室等「ウエディングサロン…挙式中はスタッフの控室等に使用する」挙式中、サロンは相談・申込みに使えない。式場部門は1・2階にまとまる2階に打合せスペースを設け、着付室・写真・衣装室もサロンと同じ階に置いた

1-2 階構成(縦のゾーニング)

階数は地上3階建てと決まっている。チャペル(1階)とウエディングサロン(2階)の位置も既存部で決まっている。したがって、迷うのはレストラン(披露宴会場)と、客室A・B・C(の一部)をどの階に置くかの2点だけである。

図1-1 階構成(東西断面の模式図)
図1-1 階構成(東西断面の模式図)

1-3 各階のゾーニング

各階とも「西=管理、中央=共用と宿泊客のEV、東=式場・既存部」の並びをそろえている。図の色は図1-1と同じく要求室等の部門で塗り分けた。課題文の「管理・共用部門」は、従業員が使う側(フロント・クローク・事務室・更衣室・厨房など)を管理、利用者が使う側(ロビー・ラウンジ・レストランなど)を共用に分けて示し、設備の室は管理に含めた。宿泊客用の中央EVは宿泊部門の色とした。図は解答例の平面図に色を付けたものである。

⑴ 1階

1階は、敷地の条件からほぼ自然に決まる。西の道路(幅員6m)はサービスの出入りに、南の道路(幅員12m・歩道付き)は利用者の出入りに向く。東には既存部(チャペル)と前庭があり、その先にローズガーデンがある。

図1-2 1階のゾーニング(模式図)
図1-2 1階のゾーニング(模式図)(ボタンを押すと、人が動線に沿って歩きます)
ゾーン配置した主な室決め手
管理・サービス(西)通用口・守衛室・倉庫・ゴミ置場・受水槽室・機械室(給湯設備)・消火ポンプ室・西階段・西EV/サービス用駐車スペース(更衣室はフロント・クロークの裏)西の道路から搬出入でき、利用者の動線と交わらない。設備機器の搬出入・更新にも有利(留意事項⑶)
ロビー(中央)風除室・ロビー・フロント・クローク・ラウンジ・中央EV(宿泊客用)南の主出入口から入ってすぐ。フロントは三種類の利用者が必ず通るここに置く
事務室(北)事務室(執務スペース8人分)フロントの裏で、管理側とつながる
式場(北東)新婦控室・新郎控室・牧師等控室・親族控室×2既存部(チャペル)に接する側。控室からチャペルへの動線を短くする
既存部(東)チャペル(既存部1階)・新郎新婦用通路(接続部)・東階段(主たる階段)・東EV接続できる位置は既存部の西面。チャペルの出入口は前庭(南)側
車寄せ・前庭(南)ピロティ(ポーチ)・車寄せ・車椅子使用者用駐車スペース・前庭・歩行者出入口歩道の切り開き2か所で一方通行。前庭は記念撮影・屋外イベントの場

主出入口を南に置いた理由は、序章「3. その他の施設等」で述べた。幅員の広い南の道路に面し、敷地の長辺方向でもある。ローズガーデンからの歩行者も、前庭を経て南へ集まる。主出入口の前はピロティ(ポーチ)とし、2階のバルコニーが車寄せの屋根を兼ねる。1階の床高はGL+200なので、ピロティから主出入口へは勾配1/15のスロープを両側に設けて段差を解消した。

⑵ 2階

2階は、宿泊客とレストラン・挙式の外来者が同じ階を使う。この課題でゾーニングに最も気を遣う階である。北の公園側にレストラン、南に客室Cと着付室・写真・衣装室を置いた。そこで中央EVの前を宿泊側のEVホールとし、客室C1・C2の出入口はこのホールから取った。東の挙式・宴会側のEVホールとは壁と扉で区切り、扉は避難経路の位置に置いている(二方向避難のため)。外来者は東の階段・EVで上がり、待合スペースを経てレストランへ入るので、宿泊客の領域を通らない。

図1-3 2階のゾーニング(模式図)
図1-3 2階のゾーニング(模式図)(ボタンを押すと、人が動線に沿って歩きます)
ゾーン配置した主な室決め手
管理(西)厨房・従業員休憩室・リネン室・倉庫・西階段・西EV従業員は西の階段・EVで上がり、利用者の通る部分を経ずに厨房とリネン室へ行ける
共用(北・東)レストラン(披露宴会場)・宴会用倉庫・トイレ・挙式・宴会側のEVホール・東階段・東EVレストランは公園側に向けた。東のEV・階段で上がった外来者は、ここでレストランとウエディングサロンへ分かれる
宿泊(南西)客室C1・C2(各56㎡)・中央EV・宿泊側のEVホール客室の扉は宿泊側のホールから開け、挙式・宴会側のホールには開けない。客室Cは南面させた
式場(南東・中央・既存部)着付室・写真・衣装室・待合スペース・受付・打合せスペース・ウエディングサロン(既存部2階)サロンと同じ階で支度・打合せができる。披露宴の客は待合スペースの受付を経てレストランへ入る。接続部を通ってサロンへつながる

⑶ 3階

3階は宿泊客だけの階である。中廊下の南北に客室を並べ、廊下の中ほどに宿泊者用ラウンジ、東にランドリー・自販機コーナーを置いた。管理は西端の階段・EVと、リネン室・倉庫だけである。

図1-4 3階のゾーニング(模式図)
図1-4 3階のゾーニング(模式図)(ボタンを押すと、人が動線に沿って歩きます)
ゾーン配置した主な室決め手
宿泊(北・南)客室A1〜A14・客室B1・B2全室が外壁に面し、バルコニーに出られる。中廊下で南北に振り分けた
宿泊(中央)中央EV・宿泊者用ラウンジ・ランドリー・自販機コーナーEVを降りてすぐの位置に、宿泊客の共用の場を集めた
管理(西)西階段・西EV・倉庫・リネン室従業員は西から上がり、リネン室で客室の備品を扱う
東階段東階段(避難用)外来者用の東EVは3階に止まらない。階段室から客室階への扉はカードキー等で管理する

1-4 既存部との接続

既存部は西面で増築部に接している。下書用紙の点線(接続可能な位置)は、1階は西面のほぼ全長、2階はウエディングサロンの西面だけである。解答例は、増築部の東面と既存部の西面の間に幅2mの接続部を設け、既存部との境にエキスパンションジョイント(Exp.J)を入れた。

図1-5 解答例の接続部(左:1階、右:2階)
図1-5 解答例の接続部(左:1階、右:2階)
階接続箇所主に使う人意味
1階ロビー → チャペルの入口ホール(二つの扉の間)参列者・一般の利用者雨の日も屋内からチャペルへ
1階控室前の廊下 → 新郎新婦用通路(接続部) → チャペル新郎新婦・牧師等・親族ロビーを通らずに入場できる
2階挙式・宴会側のEVホール → 接続部 → ウエディングサロン挙式のスタッフ・相談に来る客宿泊側のEVホールを通らずに行ける

1-5 動線計画とセキュリティ(計画の要点等⑵)

計画の要点等⑵は、主文⑴をそのまま問いにしたものである。ホテル利用者の三者(宿泊客・チャペル利用者・レストラン利用者)と従業員の四者に分け、どこから入り、どこを通り、どこで交わらないかを整理する。

利用者入口主な経路ポイント
宿泊客主出入口ロビー → フロント → 中央EV → 3階(客室A・B)/2階(客室C)フロントの前を必ず通る
チャペル利用者主出入口・ローズガーデン(前庭)ロビー → チャペル/前庭 → チャペル出入口。挙式後は東の階段・EV → 2階レストラン屋外(前庭)と屋内(ロビー)の両方から入れる
新郎新婦・親族主出入口控室 → 新郎新婦用通路 → チャペル/親族控室 → 廊下 → チャペル参列者の通り道と分ける
レストラン利用者(一般客・宿泊客)主出入口/客室階一般客:ロビー → 東の階段・EV → 2階の廊下 → レストラン。宿泊客:中央EV → 2階の廊下 → レストラン。披露宴の客は2階の受付(挙式時)を経てレストランへ一般客は客室階を通らない。待合スペースは主に披露宴のときの待合せに使う
従業員・物品西の通用口守衛室 → 更衣室 → 西の階段・EV → 各階のリネン室・2階の厨房利用者の動線と交わらない
図1-6 縦動線(階段・EV)の系統と停止階
図1-6 縦動線(階段・EV)の系統と停止階

セキュリティの線は二つある。一つは客室階(3階)に外来者を入れないことである。解答例は、外来者が使う東のEVを1・2階だけに止め、宿泊客は中央の宿泊客用EVで3階へ上がる形とした。東西の階段は避難のため3階まで通じるので、階段室から客室階へ入る扉はカードキー等で入室を管理する(図面に表れない部分は記述で補う)。もう一つは管理ゾーン(西)と利用者のゾーンを分けることで、従業員は守衛室のある通用口から出入りし、西の階段・EVで各階のリネン室と厨房へ行く。

1-6 各階のプランニング

各階の平面は、1-3の図1-2〜1-4(解答例の平面図に部門の色を付けたもの)とあわせて読んでほしい。

⑴ 1階(共用・式場・管理)

⑵ 2階(レストラン・挙式の支度・客室C)

⑶ 3階(客室階)

1-7 外構計画(計画の要点等⑸)

外構は、主文⑶「敷地内外の環境への配慮」と、3.⑶「既存部の前庭での記念撮影や屋外イベントなどの利用に配慮」を受けている。要求図書②ホでも「既存部の前庭等の外構計画(植栽、通路、ローズガーデンとの接続部等)」の記入が求められている。

参考資料

第2章設備

課題文の設備条件/過去問での扱い/空調(個別方式)/客室Bの空調換気/給湯(中央式)/給水・消火・電気/省エネ・CO2削減/搬出入と景観

2-1 課題文の設備条件と解答例

序章の「要求室等」で、設備の最後の一文「採用した設備計画に応じて、「機械室」等を適切に設ける」は「方式を自分で決め、それに合う室を設けよ」という意味だと読み解いた。課題文の設備条件と、解答例での扱いを並べると次のようになる。

課題文計画上の意味解答例での扱い
受水槽室(50㎡以上)「受水槽及び給水ポンプを設ける」受水槽+加圧給水ポンプ方式。水槽のまわりに点検スペース(6面点検)1階西に56㎡。受水槽(2槽式・6面点検)と給水ポンプ
消火ポンプ室「屋内消火栓用とする」屋内消火栓の加圧送水装置を置く室1階西。消火ポンプ
「電気設備(キュービクル)を屋上に設ける」屋上設備スペースにまとめ、断面図に図示(要求図書⑷⑤)屋上設備スペース
「空調室外機、エレベーター、PS、DS、EPS等を、適切に設ける」方式に応じた機器置場とシャフト。上下階で同じ位置に通す室外機は屋上。PS・EPSを各階で上下に通した
「採用した設備計画に応じて、「機械室」等を適切に設ける」方式を決め、その方式に合う室を設ける1階西に「機械室(給湯設備)」。貯湯槽2基と給湯ポンプ
既存部「空調設備及び電気設備は改修する必要はない」既存部の設備はそのまま使える既存部の屋根・外観に設備を載せない
留意事項⑶「設備機器等の搬出入、更新、メンテナンス性及び景観に配慮」1階の設備室は外部から直接搬出入。屋上は階段で上がれるように機械室の西の外壁に搬出入口。西の管理階段を屋上まで

2-2 過去問での扱い

近年の課題では、空調や給湯の方式を課題文で指定し、記述でその理由を問う出し方が多かった(『論点』第2章)。今年は方式の指定がなく、「採用した設備計画に応じて」室を設ける出し方である。

年課題設備の条件・記述の設問
2014温浴施設のある「道の駅」条件:浴室の給湯は「熱源機器と貯湯槽からなる中央給湯方式」
2017小規模なリゾートホテル条件:空調は「外気処理空調機+ファンコイルユニット方式」、給湯は熱源機器+貯湯槽による中央式
2019美術館の分館屋上設備スペース(空冷ヒートポンプ・外調機・電気設備)
2020高齢者介護施設屋上に空調室外機・キュービクル・自家発電設備
2026チャペルを併設したホテル条件:受水槽・消火ポンプ・屋上キュービクル。空調・給湯は方式の指定なし(「採用した設備計画に応じて」機械室等)。記述:客室Bの空調換気、省エネ・CO2削減

2-3 空調:個別方式とした理由

空調は空冷ヒートポンプの個別空調(ビル用マルチ)とし、室外機を屋上の設備スペースにまとめた。理由は三つある。

系統は使う時間帯で分け、系統ごとに運転できるようにした。

系統対象使う時間帯
客室系2・3階の客室夜間中心
レストラン・宴会系2階レストラン・待合スペース・打合せスペース昼・夜、婚礼時
式場系控室・着付室・写真・衣装室挙式時のみ
管理系事務室・フロント・更衣室・従業員休憩室等常時

2-4 客室Bの空調換気(計画の要点等⑴③)

計画の要点等⑴は、客室Bについて①バリアフリー、②水回りの段差処理と構造、③空調換気を、1/50程度の客室内平面図と客室内断面図で示す問いである。三つを別々に考えず、1枚の断面図にまとめて描けるように計画しておくのがよい。

図2-1 客室Bの客室内断面のイメージ(⑴②・⑴③を1枚で示す)
図2-1 客室Bの客室内断面のイメージ(⑴②・⑴③を1枚で示す)

下がり天井をつくると、大梁の下に天井内の空間が取れ、室内機とダクトが納まる。床側は水回りのスラブを下げて段差をなくす(第4章)。上下でそろえて描けば、⑴②と⑴③を同じ断面図で説明できる。

2-5 給湯:中央式とした理由

給湯は、熱源で湯をつくって貯湯槽にため、配管で各所へ送る中央式とした。熱源はCO2冷媒のヒートポンプ給湯機で、屋外機なので屋上の設備スペースに置く。1階の機械室には、貯湯槽2基と給湯ポンプだけを置いた。

図2-2 給水・給湯・空調の縦の系統(模式断面)
図2-2 給水・給湯・空調の縦の系統(模式断面)

2-6 給水・消火・電気

給水は受水槽+加圧給水ポンプ方式で、課題文のとおりである。受水槽は2槽式とし、周囲に点検スペース(6面点検)を確保した。2槽式にすると、清掃・点検のときも片方で給水を続けられる。消火ポンプは屋内消火栓用とし、消火ポンプ室に置いた。キュービクルは屋上で、断面図の屋上設備スペースに「キュービクル・空調室外機・ヒートポンプ給湯機」と記入した(要求図書⑷⑤)。

2-7 省エネルギー・CO2削減(計画の要点等⑷)

⑷は「ホテルの機能や特性を踏まえた」配慮を問い、太陽光パネル・LED照明・Low-Eガラスの記述を除いている。定番の答えを封じて、自分の計画からホテルならではの配慮を引き出せるかを見ている。解答例の計画に沿えば、次のように書ける。

観点配慮
使い方に合わせた運転使う時間帯で空調系統を分け(客室・レストラン・式場・管理)、系統ごとに運転する。挙式のない日は式場系を止められる
客室の無駄の削減カードキー連動で、不在時は空調・照明を停止・抑制する
換気の熱損失の削減全熱交換器で排気の熱を回収する。レストランはCO2濃度で換気量を調整する
給湯の高効率化湯を多く使う用途なので、CO2冷媒ヒートポンプ給湯機と貯湯槽で高効率に湯をつくる
日射の遮蔽南北のバルコニーが庇となり、夏の日射を遮る

2-8 搬出入・更新と景観(留意事項⑶)

参考資料

第3章法規

法規の前提/延焼ラインと公園/防火区画/最小後退距離/高さ制限/避難/バリアフリー

3-1 法規の前提

序章で読み解いた敷地と建築物の条件を、法規の言葉に置き換えると次のようになる。

項目課題文・解答例法規上の意味
用途ホテル(チャペル・レストランを含む)法別表第1(い)欄(2)項の特殊建築物
用途地域等近隣商業地域・準防火地域、建蔽率80%(所定の加算を含む)、容積率200%道路斜線1.5・適用距離20m、隣地斜線は31m+2.5(訂正表)
耐火建築物増築部は地上3階建ての耐火建築物(課題文の指定)3階に宿泊室がある(法第27条)。準防火地域で延べ面積1,500㎡超(法第61条・令第136条の2)。どちらからも耐火建築物等が求められる
一の建築物既存部と増築部を接続して一の建築物とする面積・避難・延焼ラインは既存部を含めて扱う。構造はExp.Jで切れば別の建築物とみなせる(第4章)
既存部の状態建築設備・構造とも現行基準に適合(耐震改修済み)増築に伴う既存部の遡及(既存不適格の扱い)を考えなくてよい前提が与えられている

最後の行は、課題文の表の「その他」の書き方から読める。既存部が現行基準に適合していると明記されているので、受験生は「増築したら既存部の構造をどう扱うか」を悩まずに済む。その代わりに問われたのが、接続部(Exp.J)のクリアランス(計画の要点等⑶、第4章)である。

3-2 延焼ラインと「防火上有効な公園」

延焼のおそれのある部分(法第2条第六号)は、隣地境界線・道路中心線、または同一敷地内の二以上の建築物(延べ面積の合計が500㎡以内の建築物は一の建築物とみなす)相互の外壁間の中心線から、1階は3m以下、2階以上は5m以下の距離にある部分である。ただし、防火上有効な公園、広場、川等の空地若しくは水面又は耐火構造の壁等に面する部分は除かれる(同号イ)。

本課題の敷地図は、北の公園に「(建築基準法第2条第六号イに該当しない。)」と書いている。つまり、この公園は延焼のおそれのある部分から除ける公園ではない。北側の隣地境界線からも、通常どおり延焼ラインが生じる。

図3-1 延焼ラインと最小後退距離(配置の模式図)
図3-1 延焼ラインと最小後退距離(配置の模式図)
方角起点延焼ライン解答例の扱い
西(道路6m)道路中心線1階は道路境界線上、2・3階は境界線から2m内側外壁は境界線から2,650なので、建物にかからない
南(道路12m)道路中心線道路内に収まり、敷地には生じない防火設備は不要
北(公園)隣地境界線1階3m、2・3階5m(防火上有効な公園ではない)北面の開口部に防火設備(防)
東(写真館)隣地境界線1階3m、2・3階5m既存部にかかる。増築部の東面にはかからない
増築部と既存部の間―生じない(一の建築物。留意事項⑷でも念押し)接続部に延焼ラインは引かない

過去の本試験では、公園は「防火上有効な公園」として与えられ、延焼ラインが生じない側として扱われてきた。今年は、その逆を課題文に書いている。

年公園等の条件標準解答例での扱い
2023北側に公園(防火上有効な公園)北側には延焼ラインが生じないものとして扱っている
2025南側の隣地に公園(防火上有効な公園)南側には延焼ラインが生じないものとして扱っている
2026北側に公園(法第2条第六号イに該当しない)北側からも延焼ラインが生じる(本課題)

3-3 防火区画

留意事項⑷は、延焼ラインとあわせて「防火区画(面積区画、竪穴区画等)に要求される所定の防火設備」を求め、要求図書①ハで「防火区画に用いる防火設備の位置及び種別」の記入を求めている。

区画考え方解答例
面積区画(令第112条第1項)主要構造部を耐火構造とした建築物は、床面積の合計1,500㎡以内ごとに、耐火構造の床・壁と特定防火設備で区画する。延べ面積は2,852.25㎡で1,500㎡を超える。各階は床で区切られるが、階段・EVで上下の階がつながる各階を床で区切り、階段・EVの出入口に特定防火設備(特)を設けて、1,500㎡以内ごとに区画した
竪穴区画(令第112条第11項)3階以上の階に居室がある建築物では、階段・昇降路(EV)・吹抜け等を、その他の部分と区画する(防火設備は遮煙性能のあるもの)階段・EVは面積区画と兼ねて「特」。既存部の吹抜(チャペル上部)とサロンの間の「特」は下書用紙のとおり

2024年(令和6年)の標準解答例でも、面積区画と竪穴区画の考え方が示されている。階段・EVの出入口の「特」は、面積区画と竪穴区画の両方を満たすためのものである。防火区画は、図面に「特」を記入して初めて伝わる。記入が漏れていないかを確かめたい。

3-4 最小後退距離

要求図書②ニは「建築物から敷地境界線までの最小後退距離」である。序章で述べたとおり、「道路境界線」ではなく「敷地境界線」なので、隣地側も記入する。測るのは壁面ではなく、建築物のうち一番境界線に近い部分からである。上階のバルコニーも建築物の一部なので、その先端から測る。

方角解答例測った位置備考
西(道路)2,6501階の外壁(柱の面)通用口の庇は除く(下の表)
南(道路)3,5002・3階のバルコニー(車寄せの屋根)の先端幅32mで除けない
北(公園)5002・3階のバルコニーの先端隣地側も記入する
東(写真館)1,500既存部下書用紙のとおり

道路斜線の後退距離の算定では、一定の小さな部分を除いて測れる(令第130条の12)。解答例は、西側の通用口の庇を次の理由で除いた。

令第130条の12第二号(ポーチ等)の要件要件西側通用口の庇
前面道路に面する長さ敷地の接道長さの1/5以下1/5以下
道路境界線からの距離1m以上1m以上
高さ5m以下5m以下(1階の庇)

断面図には「西側通用口の庇は、高さ5m以下・間口率1/5以下・道路境界線から1m以上のため、後退距離の算定から除いた」と注記している。南のバルコニーは道路に面する長さが32mあり、1/5を超えるので除けない。

3-5 高さ制限

要求図書⑷③は「高さ制限への適合が確認できる情報(道路・隣地斜線、最小後退距離、計算式等)」を求め、括弧書きで「道路高さ制限及び隣地高さ制限がかからない根拠を必ず記入する」としている。

この括弧書きは、令和8年に初めて付いた。過去5年の断面図の記入事項と並べると、違いがよく分かる。

年断面図の記入事項(高さ制限)
令和3年道路高さ制限への適合が確認できる情報(道路斜線、斜線勾配等)を図示する。
令和4年道路高さ制限への適合が確認できる情報(道路斜線、斜線勾配、最小後退距離、計算式等)を記入する。
令和5年高さ制限への適合が確認できる情報(道路・北側斜線、最小後退距離、計算式等)を記入する。
令和6年高さ制限への適合が確認できる情報(道路斜線、最小後退距離、計算式等)を記入する。
令和7年高さ制限への適合が確認できる情報(道路・隣地斜線、最小後退距離、計算式等)を記入する。
令和8年高さ制限への適合が確認できる情報(道路・隣地斜線、最小後退距離、計算式等)を記入する。(道路高さ制限及び隣地高さ制限がかからない根拠を必ず記入する。)

過去の標準解答例は、断面の両端に現れる方位の根拠だけを断面図に書いている(令和3年だけは、断面に現れない南の道路斜線を基準階平面図に書いた)。令和8年は「かからない根拠を必ず」と念押ししているので、解答例は、断面に現れない南の道路と北の公園も含めて全方位の根拠を断面図に書いた。ただし、その注記は断面図の欄にあるものである。南北の根拠がなくても減点にはならないと予想する。

図3-2 道路斜線の検討(西側道路、断面の模式図)
図3-2 道路斜線の検討(西側道路、断面の模式図)
図3-3 解答例の東-西断面図(高さ制限の記入:西・南の道路斜線、東・北の隣地斜線)
図3-3 解答例の東-西断面図(高さ制限の記入:西・南の道路斜線、東・北の隣地斜線)

3-6 避難(直通階段・歩行距離・敷地内通路)

留意事項⑸は「地上に通じる2以上の直通階段」と「敷地内の避難上必要な通路」を求め、要求図書③イで2・3階の歩行経路・歩行距離・重複区間の長さの記入を求めている。

項目基準解答例
歩行距離(令第120条)ホテル(別表第1(2)項)で主要構造部が準耐火構造等の場合、居室の各部分から直通階段まで50m以下(内装を準不燃とすれば+10m)2階:25.3m(東)・51.0m(西)
3階:23.7m(東)・24.9m(西)
重複区間(令第121条第3項)歩行距離の限度の1/2以下(25m以下)2階:19.5m
3階:9.6m
階段の寸法(令第23条)直上階の居室の床面積の合計が200㎡を超える階:幅120cm以上、蹴上げ20cm以下、踏面24cm以上西の管理階段:蹴上げ約195mm(1〜2階)、踏面240mm
敷地内通路(令第128条)屋外への出口から道路等まで、幅員1.5m以上主出入口・通用口・チャペル出入口から道路まで2.0m程度を確保

近未来資格の解答例では、2階で最も遠い位置になるのは既存部のウエディングサロンである。既存部も一の建築物の一部なので、ここからの歩行距離と重複区間を確かめる必要がある。サロンから東の階段へ向かう経路と西の階段へ向かう経路は、途中まで同じ道をたどる。EVホールの東の階段の前までの共通部分が、重複区間(19.5m)になる。階段を建物の中央付近に寄せると、サロンからの重複区間が長くなりやすい。

3-7 バリアフリー

課題文は、増築部と既存部を「建築物移動等円滑化基準」に、主たる階段を「建築物移動等円滑化誘導基準」に適合させるよう求めている(2.⑵)。ホテルは特別特定建築物で床面積2,000㎡以上なので、円滑化基準への適合は法律上も義務になる規模である。

項目基準解答例
主たる階段(誘導基準)幅140cm以上、蹴上げ16cm以下、踏面30cm以上東の階段:踏面300mm、蹴上げ約143mm(1〜2階4,300÷30段)、2〜3階は150mm(4,500÷30段)
出入口の段差移動等円滑化経路となる敷地内の通路の傾斜路は勾配1/15以下(円滑化基準)主出入口の前に勾配1/15のスロープ(GL±0→GL+200)
接続部段差を設けない増築部の床高を既存部にそろえた
客室B車椅子使用者用客室(課題文で2室以上)宿泊客用EVの近くに2室。出入口は引戸、φ1,500の回転スペース、浴槽(移乗台・手すり付き)
便所車椅子使用者用便房1・2階にバリアフリートイレ

誘導基準の階段は、普通の階段よりずっと長くなる。1〜2階の4,300mmを蹴上げ16cm以下で上がるには27段以上が要り、踏面30cmなら段の部分だけで延べ約7.8m、折り返しても1本あたり約4mになる。主たる階段は、最初から長さを見込んで平面を組むこと(序章「2. 建築物」)。

参考資料

第4章構造

増築部の架構/既存部の扱い/客室Bの段差処理/Exp.Jのクリアランス/基礎

4-1 増築部の架構

序章の「2. 建築物」で、増築部は「構造種別は自由とし、地上3階建ての耐火建築物」と読み解いた。解答例は鉄筋コンクリート造のラーメン構造とし、東西8m×4スパン、南北7m×4スパンのグリッドに柱を並べた。東西方向(X方向)を8mにそろえて計画すると、敷地を有効に使える。もちろん、6m・7mなど、各自のプランに応じたスパン割で問題ない。南北方向(Y方向)も、解答例は7m×4スパンの28mで計画したが、6m・7m・8m・9mなどの組み合わせでも計画できる。

図4-1 増築部の架構(8m×7mのグリッド、模式図)
図4-1 増築部の架構(8m×7mのグリッド、模式図)

4-2 既存部の扱い

既存部の構造は「耐震スリットを用いた純ラーメン構造による鉄筋コンクリート造」で、「耐震改修が既に行われており、建築基準法の現行基準に適合しているものとし、柱と梁は、撤去してはならない」と書かれている。この一文から、次の三つが読み取れる。

課題文読み取れること解答例
耐震スリットを用いた純ラーメン構造壁を骨組みから切り離し、柱と梁だけで地震に抵抗する。壁付きのラーメンより変形が大きくなるExp.Jのクリアランスに、既存部の変形を大きめに見込んだ(4-4)
耐震改修済み・現行基準に適合既存部の補強や遡及を考えなくてよい増築部とExp.Jで縁を切り、既存部の構造には手を加えない
柱と梁は撤去してはならない接続の開口は柱と柱の間、梁の下に収める1階2か所・2階1か所の開口を柱間に収めた

増築部と既存部をExp.Jなど相互に応力を伝えない構造方法だけで接していれば、構造の規定(法第20条第1項)の適用上は、それぞれ別の建築物とみなされる(同条第2項)。一の建築物として法規(面積・避難・延焼)を扱いながら、構造は別々に成り立たせる。これが、今年の課題の「接続」の意味である。

4-3 客室Bの段差処理(計画の要点等⑴②)

車椅子使用者用の客室Bは、浴室・洗面・トイレと部屋の間に段差があってはならない。水回りの床を部屋と同じ高さに仕上げるには、配管と排水勾配のための床下の空間をスラブを下げてつくる。問いが「梁の架け方等」と例示しているので、スラブを下げる範囲と梁の架け方をセットで答える。

図4-2 客室Bの客室内平面のイメージ(⑴①・⑴②)
図4-2 客室Bの客室内平面のイメージ(⑴①・⑴②)

1/50の客室内断面図には、スラブの下がりと小梁、仕上げ面がそろっていることを示す。第2章の図2-1のように、天井側の下がり天井(室内機)と同じ断面に描けば、⑴②と⑴③を1枚で説明できる。⑴①のバリアフリー計画は、平面図に回転スペース(φ1,500)、ベッドまわりの移乗スペース、引戸、手すりを描いて示す。

4-4 Exp.Jのクリアランス(計画の要点等⑶)

増築部と既存部は、構造的にはExp.Jで縁を切る。地震のとき二つの建物は別々に揺れるので、互いに近づく向きに揺れてもぶつからないだけの隙間(クリアランス)が要る。⑶は、その寸法と設定根拠を、文章・図・イラストで示す問いである。

図4-3 Exp.Jのクリアランスの考え方(変形は誇張)
図4-3 Exp.Jのクリアランスの考え方(変形は誇張)
項目考え方解答例
対象の高さ両方の建物が向かい合う最も高い位置既存部の軒の高さ(約8m)
増築部の変形RC造ラーメン構造。接続部の高さの1/100を目安とする(『論点』と同じ考え方)8,000×1/100=80mm
既存部の変形耐震スリット付きの純ラーメン構造で、壁付きより変形が大きい。小さく見込まず1/100とする8,000×1/100=80mm
クリアランス両建物の変形量の和以上。施工誤差・余裕を見る80+80=160mm → 200mm

4-5 基礎

課題文1.⑸に「地盤は良好であり、杭打ちの必要はない」とあるので、直接基礎とした。解答例はピットを設けた基礎とし、設備配管をピットに通せるようにした。既存部の基礎とは、Exp.Jの位置で縁を切る。断面図には、要求図書⑷④のとおり基礎・壁・梁及びスラブの断面を描いている。

参考資料

終章総括

この課題の真相/令和8年度「ホテル」の難易度/さいごに

この課題の真相

序章で課題文を読み解き、第1章から第4章で解答例の考え方を論じてきた。最後に、この課題が何を問うていたかを三つにまとめる。

①既存部とつながる一の建築物 既存部を残し、1階と2階の屋内で接続する。柱と梁は撤去できず、接続できる位置も決まっている。床高をそろえて段差をなくし、Exp.Jで構造を切る。法規は一の建築物として、構造は別々に成り立たせる。エスキスの面では、特にY方向(南北)のスパン割によっては既存部の接続可能な位置と増築部の柱間がうまく合わず、接続部での行き来が計画しにくくなることが考えられる。建蔽率・容積率には余裕があるものの、スパン割をうまく決めないと、客室の配置計画も含めて時間を大きく取られる課題であった。本解答例は、建築面積をできるだけ広く取る考えから、X方向8m・Y方向7mのスパンで計画した。そのため屋内に余裕ができ、挙式関連の室や宿泊者用ラウンジなどを任意で設けている

②利用者の動線・ゾーニングと敷地内外の環境 ⑴宿泊客、⑵チャペル利用者、⑶レストラン利用者、⑷従業員。四つの動線を、階構成と1階のゾーニングで分ける。外来者と宿泊客の線引きが、図面から読めることが大切である。新郎新婦と参列者の線引きは、課題文で厳密には求められていない。ゾーニングとしては、増築部の式場部門が1階(控室)と2階(着付室・写真・衣装室・待合スペース・打合せスペース)にまたがるので、同じ階の共用部門や宿泊部門との兼ね合いをうまくつけなければならない。そんなに多くの挙式関連の室を計画しなければならなかったのか、と思った受験生も多いだろう。しかし、あくまで今年の課題はホテルである。必要最低限の控室に加え、披露宴ができるレストランがあることを考えれば、任意で設ける関連の室(着付室・写真・衣装室など)が採点上どのように扱われるかはわからないが、大きな減点にはならないと予想する。敷地内や屋内の平面的な動線に加えて、部門ごとの縦動線(階段・EV)の処理がうまくはまらないと、ここでも時間を消費させられた。また、敷地の周りには北の公園、東のローズガーデン、南の前庭がある。公園側にメインの室を向け、前庭は記念撮影や屋外イベントに使える広さを残し、ローズガーデンから歩いて来る人の経路もつくる。動線とゾーニングは、建物の中だけでなく敷地内外の環境とあわせて組み立てたい

③法規の読み取り 北の公園は「法第2条第六号イに該当しない」と書かれ、防火上有効な公園ではないので、公園側にも延焼ラインが生じる。一方、既存部と増築部は一の建築物なので、その間に延焼ラインは生じない。最小後退距離は「敷地境界線まで」なので隣地側も記入し、バルコニーの先端など建築物の一番近い部分から測る。断面図には、今年初めて「道路高さ制限及び隣地高さ制限がかからない根拠を必ず記入する」と念押しされた。避難は既存部も含めて確かめる。プランによっては、2階で最も遠い位置が既存部のウエディングサロンになる可能性もある。法令集を持ち込めるようになった年に、課題文の一文一文を法規の言葉に置き換えて読めたかが問われた

課題文に書いてあることを一つずつ図面と記述に落とし込めたかが合否を分けたはずである。

令和8年度「ホテル」の難易度

建蔽率・容積率に余裕があり、階数も3階と決まっていたので、面積を収めること自体は難しくなかった。高さも既存部の階高に合わせるとほぼ決まるので、西の道路側に適度なヘリアキを設ければ、高さ制限にかかる可能性も低かっただろう。一方で、既存部の接続位置に合わせたスパン割と客室の配置、1・2階にまたがる式場部門と宿泊・共用部門のゾーニング、部門ごとの縦動線と、エスキスで時間を取られる要素が多かった。設備の方式は自由で、法規では断面図に「かからない根拠を必ず記入する」と念押しされた。条件の一つ一つは難しくないが、それらを時間内にまとめ切るのが難しい課題であった。エスキスの方法を確立していないと、条件整理から1/400のプランニングに入るまでに何度も手が止まり、1/400のプランニングに入っても辻褄合わせに時間を取られる。実際に、うまく収まらないケースが散見された。

近未来資格では、令和8年度の難易度を過去問と照らし合わせ、10段階中8(非常に難しい)と位置づけた。

さいごに

この解説書が、今後の受験生にとって道標の一つとなれば幸いである。

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